おまたせしました!
エルドリッヂさんの講演会内容をUPしました!
アメリカ人が期待する今後の日台関係を語って頂きました
去る6月2日、国際政治学者ロバートD.エルドリッヂさんに集いにお越し頂き、アメリカ人の視点から今後の日本、台湾に期待する事を多いに語って頂きました。テレビで拝見する通り終止和やかな雰囲気で時折シニカルな冗談を交えながら中身は真剣、沖縄の危機を語り、偽りの平和に慣らされた日本の覚醒を叫び、台湾への警鐘を鳴らす。
会場ではロバートさんの書籍販売もあり、購入された方々にはロバートさん直筆のサインを丁寧にされておりました。
ロバートさん、またお越し下さい!
講師略歴:ロバートD.エルドリッヂ氏
・生年月日 昭和43年(1968年)1月23日、米国ニュージャージー州生まれ (米国籍)
・前職 米国海兵隊太平洋基地政務外交部(G-7)次長
・専門分野 日本政治外交史、日米関係論、戦後沖縄史、安全保障、対外政策、防災政策、人道支援・災害救援活動など
・研究関心 日米の防衛協力、災害における日米協力、自衛隊の歴史、沖縄問題、沖縄、奄美と小笠原の返還過程の比較研究、
日本政治・外交
東日本大震災発生時、トモダチ作戦を立案。
当日の講演内容です
20190602 第60回 日本と台湾を考える集い
「アメリカ人が期待する今後の日台関係」
エルドリッヂ研究所代表 ロバート・D・エルドリッヂ氏(政治学博士)
1)自己紹介・挨拶
A)日本との関わり
文部省のJETプログラム(若い英語教師を日本に派遣するプログラムで、日本との架け橋になる人材育成につながっている)
で日本のことを何も知らずに来日したとき、1年だけの予定だった。
プログラム終了後も残り、関西や沖縄に住んで、来日して29年になる。
今日は、これまで取り組んできた研究を紹介したい。
神戸大学大学院在学中に阪神淡路大震災を体験し、防災を考えるようになった。
その中で日本の危機管理の哲学や戦略のなさに気づき在日米軍を活用するよう政策提言したが
日本政府などに2011年まで無視された。
日本の南海地震対策はまだ充分ではない。
妻の実家は高知だが、本四架橋が壊れると本土からの支援が難しい。
米海兵隊は海からの上陸が得意。
広域災害の場合、自衛隊は広域で動かさずに本来の管轄地域で活用し米軍に補完的に働いてもらうべきだ。
B)台湾との関わり
小5のころ、家の中の物がどこで作られたかを調べる授業があった。
おもちゃなど、台湾製のものがあって調べたのがきっかけ。
台湾には知人の結婚式で2010年にはじめて行った。台湾は行けば行くほど好きになる。
神戸大学にいた時は1996年の台湾危機と重なっていたが、
台湾留学生と中国留学生の台湾をめぐる国際地位をめぐる議論に遭遇する機会があった。
どう見ても台湾留学生の立場が正しいと痛感し、守る意思が強くなった。
独裁的なかつての台湾なら応援することを米国民が簡単に納得しないが、冷戦後の今は台湾は民主化されている。
多くの米国民は現在の台湾を知らず、少し前の台湾、つまり中華民国のイメージをもっている。広報が大切。
今執筆中の沖縄返還についての本を書き終えたら、台湾外交部の招聘研究員になりたい。
2)基本的な見解
日・米・台は運命共同体だと考えている。
日米、日台、米台の二国間でなく、3か国をセットで見るべき。
更に言えば台湾は日本にとってアメリカと同等あるいはそれ以上に大事な国。
地政学的にも台湾が中国に取られると尖閣、沖縄が危うくなり、日本自体が中立か奴隷かになりかねない。
「台湾は国家であり、中国の一部ではない」と私はいつも発言している。
せめて日台で地方自治体相互の姉妹都市関係を広げて行けば、国と関係なく日台の関係強化が今日からできる。
3)台湾が国家であれば
日米が直ちに承認すべき。
過去40年以上、台湾よりも中国との関係を優先しすぎたわけだが、前提がまちがっていた。
今の台湾は完全な民主国家であり、台湾人には自分達のアイデンティティを持ち、自決する権利がある。
台湾の蔡英文総統の就任式に参加した際に衝撃的な経験をした。
30代の女性と隣席になり、彼女に台湾か中国かアイデンティティを聞いた。
すると私のルーツがどこかと聞かれた。
先祖はアイルランド、イギリスやドイツの出身だと言うと、ではロバートさんはアイリッシュですか?
それともイギリス人、ドイツ人ですか?と言われた。
どれも違う。その話を聞いて、とても納得した。
4)米国にとっての台湾の重要性
軍事的、戦略的理由から台湾はきわめて重要な位置にある。
防波堤になっていると同時に作戦展開時にも重要な位置にある。
心理作戦上の重要性もある。
というのは、中国は、「文化的に民主主義は定着しない」「中国には民主主義の伝統がない」といつも言うが、
中国の文化・伝統を受けている台湾が見事な民主国家になっていることで、
中国の主張への重要な反論材料になっているからだ。
香港もそうだ。
民主主義国家としての台湾の存続の重要性がますます高まっている。
米台間は、台湾関係法によって準同盟関係と考えてよい。
その台湾をアメリカが守るかどうかということをアメリカの同盟国は注目しており、
アメリカは外交関係を維持するには台湾を守る必要がある。
5)日本にとっての台湾の重要性
日本にとって台湾はアメリカと同等かそれ以上に重要な存在だが、
それに見合う行動を日本政府がしていないと思う。
2015年に『尖閣問題の起源』という本を出した。
沖縄返還のとき、アメリカは中立政策をとってしまった。
尖閣の施政権は日本に返したものの、領有権(主権)が誰のものかはあいまいなままにした。
尖閣が日本のものなのか中国のものなのか台湾のものなのかは、
当事者同士で決めるよう、きわめて無責任な政策をとった。
この本『尖閣問題の起源』は、まだ私が米政府に勤め、現役のとき、クビになる覚悟で出版した。
アメリカの政策を真っ正面から批判する国家公務員はあまりいない訳で(笑)、
でもクビにならず、私はがっかりした。
というのは、クビにされなかったことは、アメリカ政府の関係者が読んでいないことを意味するからだ。
(尖閣問題の歴史はこの本を読まないとわからないのに・・・)
沖縄返還までは、アメリカは「尖閣は日本のものだ」との立場だった。
このことを本の中で明らかにした。
サンフランシスコ講和条約についてのダレス特使の解釈では、
日本に潜在主権がある。尖閣は南西諸島の一部なのだから、
日本は南西諸島の主権があれば尖閣そのものに対する主権があることになる。
ところが、中華人民共和国がいきなり尖閣の主権を主張しはじめたため、
中国の代表権を争っていた中華民国も主張せざるをえなくなった。
「どちらが中国の代表か」にかかわるためだ。
尖閣問題の起源は、もちろん中国が悪いが、アメリカも悪かった。
しかし、それ以降、47年間、空白にしてきた日本も悪い。
(この点について、拙論「日本の政治家は尖閣問題に背を向けている」『正論』2017年9月を参照。)
6)尖閣諸島の取引
2016年に大胆な政策提言を発表した(拙論「『日米台同盟』で尖閣を防衛せよ」『正論』2016年8月号参照)。
尖閣についての取引ができるのではないか、ということ。
・米国は尖閣の主権は日本にあることをはっきり公に認め主張すべき。
(アメリカは中国と台湾に説得を試みるが、どちらも嫌がるだろう。特に中国は最後まで反対するだろう)
台湾としては、日本に主権が行ったことを受けて領有権の主張を取り下げる。(台湾政府は台湾国内を説得する)
・アメリカと日本は、台湾を国家として認める。
さらに
・蔡英文政権の在任中に実現すれば、蔡英文総統のノーベル平和賞受賞を日本が推挙する。
このような取引ができれば、日米台の同盟が必然的に成立することになる。
嫌がっている中国が尖閣に対して何か行動をとっても、この三者で連携して対応できる。
カギになるのはアメリカの姿勢だが、オバマ時代にはできなかった。
いまトランプ政権になってから、毎週のように新しい台湾情勢の動きがある。
7)日本版台湾関係法の早期制定へ
もうひとつ、日本版の「台湾関係法」の早期制定を提案した。
(拙論「日本版『台湾関係法』制定を今こそ」『正論』2018年9月)
2019年、アメリカの台湾関係法が成立40周年を迎えた。
この時期に日本版の台湾関係法ができればよかったが、
前年の秋の国会は外国人労働者拡大の議論ばかりで、
日本にとって重要な台湾のことが話されずに情けなかった。
中国の脅威はますます増大している。
以前は中国が台湾を侵略することは軍事的に難しいという認識だったが、
今や完全に台湾を制覇できる能力を持つに至った。
中国の発言・能力・実行意思の3つが揃うと非常に危ない。
そんな中にあって、日本の役割が議論されていない。
自民党系代議士が台湾に行っていろいろ言っているが行動につながっていない。
有事の時に日本だけ行動が伴わないと、運命共同体である日米台の三者が連携できない。
特に日と台の連携がいちばんできていない。作戦が難しくなる。
日本は、アクサ協定(ACSA物品役務相互提供協定)で、
アメリカやイギリス、オーストラリアと物品の融通ができるし、
カナダやフランスとも近いうちに締結する予定だが、いちばん重要なのが台湾との連携。
国家ではないという理由で台湾との連携をすすめていないことが問題。
安倍政権と蔡英文政権のうちに日本版「台湾関係法」を制定して、台湾と連携する方がいい。
そして台湾の孤立を早く終了させるべき。そうしなければ日本は後悔することになる。
8)その他の防衛協力
一緒に台湾を訪問したことがある元空幕長の田母神閣下が提言した、
日本と台湾との間でADIZ(防空識別圏)の共有に取り組むことで軍事交流ができ信頼関係が構築できる。
また、台湾の旧式艦を改装してオスプレイが着艦できるようにすれば、
日米間で行っている訓練に台湾が参加しやすくなる。
救急の建前で台湾艦船の参加を求める方法もある。
MEU(海兵隊の遠征部隊)は米海軍の3隻の艦艇に分乗してアジア太平洋の警察の役割を果たしている。
沖縄の海兵隊は地球の52%をカバーしていて、活動の中心にあるのがMEUだ。
本来は、MEU部隊を3つ置き、それぞれ稼働部隊、訓練部隊、整備点検部隊として運用することが必要なのに、
アジア太平洋地域には1つのMEUしかないことからミスが生じる。
2019年の8月13日は、沖縄国際大学に海兵隊のヘリが墜落してから15周年。
あの時の問題は整備ミスだったが、その原因は1つの部隊が3つ分の部隊の仕事をこなしていて、
忙しく、飛行直前にあわてて整備したことにあったと思われる。
アメリカがMEUを増やせないなら、同盟国が3隻を出せば、3つの部隊ができる。
それを国際化する方法をとるべき。日本と豪州が3隻ずつ出せば実現できる。
将来的には台湾、インドも参画できるとさらに効果的と考え15年前に提言したが、日本の動きは本当に遅い。
数年前からようやく陸自がMEUに関わるようになった。
9)防災協力
これは、安全に関する分野なので、台湾が問題なく参画できる取組みだ。
第一列島線に防災拠点を整備することを3年前に産経新聞で提案した。
つい最近、4日前に、英字紙の『台北タイムス』に日台の防災協力についての同様な内容の論点が載った
(“Response Hubs to Integrate Taiwan, http://www.taipeitimes.com/News/editorials/archives/2019/05/28/2003715904)
私の海兵隊時代の先輩が、かつて台湾と米軍の防災や防衛協力のあり方について論文を載せ、
その中で「地上版のMEU」を作ることを提案していた。
防災拠点の活動と、MEUの救援活動(人道支援)は、ほぼ同じなので、
そのことを知ってもらおうと台北タイムスに私が解説記事を寄稿した。
岩国から300kmごとに防災拠点をつくり救援物資を集積しておけば災害時にすぐに対応できるので、
岩国 → 鹿屋 → 奄美大島 → 普天間 → 下地島 → 台北 → 台南 → クラーク基地→ミンダナオ島と整備しておく。
フィリピン南部のマラウイ市はイスラム過激派組織と政府の治安部隊との戦闘で荒廃し現在復興・再建中だが、
日本政府の動きが鈍いので、そこに中国が入ろうとしている。
中国が入ると第一列島線を突破できるようになる。
また、再建した施設の債務返済ができなければ中国が手に入れ、南シナ海が中国のものになってしまうため、
日本は太平洋側で自由に動けなくなる。
中国が一帯一路構想でアフリカ・ヨーロッパ中東に行こうとしていることは有名だが、
もうひとつ太平洋諸島と南米まで出る案も持っている。従ってフォリピン南部は中国にとって最重要なところだ。
世界一の不発弾処理能力を持つ自衛隊が、マラウイ再建に向けてJICAと連携して取り組むことができれば、
復興への技術提供ができ防災協力の面でも意義が大きい。
それが難しいなら、日本とアメリカの防災訓練に、フィリピン・台湾にも早いうちに参加してもらうべきだ。
次の南海地震での効果的な支援活動を考えると、日米だけでは対処できない。
10)国際交流や広報外交
他には、日本が主導する形のTPPに台湾も参加すべき。
また、冒頭で紹介したように、日台間で姉妹都市交流をどんどんすすめるべき。
日本では1,728の姉妹都市がある。
日本の市町村数1,741(H30.10.1)と近いため、
各自治体が1つずつ姉妹都市を持っているような印象があるが、
実際には多数の縁組みのある自治体が3分の1程度あり、全く姉妹都市を持たない市長村の方が多くなっている。
私は、相手方の都合で交流活動が停滞するリスクに備えて、複数の姉妹都市をもつべきだと考えている。
台湾との連携はこれから重要だが、日台の姉妹都市提携はそれほど多くない。
普天間のある宜野湾市は、アメリカとの姉妹提携は意外にもゼロで、中国とは連携している。
総領事館も、エリートとの交流ばかり考えていて、本当に沖縄のためになる、
一般県民を視野に入れた交流行事等に取り組んでいないことが問題であり残念だ。
もうひとつ大事なのは、将来に投資する意味もある、子供達との交流。
私は日本の高校か大学で留学義務を設けてもよいと思っている。
高校無償化ではなく、家庭の事情で難しい生徒も留学できるよう、留学を無償化すべきという意見もある。
そして、極めて大事な広報外交について。
もう少し台湾が力を入れて取り組んでほしい。
アメリカでは台湾の話をほとんど聞かない。
もしかすると米台のエリート同士しか交流していないかもしれない。
台湾の法的問題等をエリート向けではなく、一般向けに働きかけていくことが大事。
おわりに
中国は、軍事的に台湾を攻略できる状態に達している。
台湾が失われたら、尖閣、沖縄、日本が危ない。
日米台は運命共同体であることに気づいてほしい。
質疑応答
尖閣は、戦後米軍の射撃場として使われていたと聞くが、
改めて日本政府に使用を申し込むようなことはできないのか?
久場島と大正島を射撃訓練場にしていたが、1978年に突然使用しなくなったのは大きな謎だ。
1978年は日中平和条約を結んだ年で、尖閣周辺に中国漁船が沢山集まった時期でもあった。
推測だが、日本の外務省かアメリカの国務省のどちらかが在日米軍に使用を遠慮するように指示した可能性がある。
アメリカ側の内部資料では、最終的な経緯がわからない。
軍はある施設を最大限使いたがるので米軍が自主的に判断して使用をやめたとは考えにくい。
この点についての日本の公開資料は皆無。
海外の研究者も日本がどのようにしてきたのかを知りたがっている。
日本が歴史的に見て良い仕事と評価されるような活動をしている場合でも、
その資料を出さないことには評価されない。これでは、広報外交ができない。
私は9年前の日米幕僚会議の時に、
「自衛隊の訓練場が非常に少ないので、米軍が尖閣の射撃場を使わないのなら日本はアメリカ政府に返還を求めるべきだ」
と提案した。
自衛隊と米軍の共同使用でもかまわないが、使わないという選択は尖閣の実行支配にならないのでダメ。
私は、尖閣のことは安全保障上の問題というよりも、
「日本政府の姿勢」の問題だと思っている。この47年間、日本政府は尖閣において何もしてこなかった。
7年前には第2次安倍政権で公務員を常駐させると公約したがしていないので公約違反。
1950年代には、尖閣に気象台を作るようアメリカが提案していたが、当時日本はお金がなくてできなかった。
1970年代初期には今度は日本が気象台設置を提案したが、
中国を意識したニクソン政権の関係で、アメリカの管理下ではやめてほしい、返還後にどうぞ、となった。
しかし、日本は、返還後何もしない「尖閣無策」が現在まで続いている。
ヘリポート、灯台、避難港(石垣や宮古の漁民用)・気象台の設置や公務員駐在という5つの取組みは、
軍事目的ではないので、今からでも行政ができること。
これらの設備は誰でも使え、特に遭難したときは国際公共財として使われ国際貢献にもなるし、
日本が実行支配していると見えるので中国も侵略しにくくなる。
逆にこれらを作らない場合は、「尖閣が本当に日本のものという自信がないことの証拠」として外国には映る。
中国は「日本は自信がない」と見て調子に乗り、いずれ尖閣が南シナ海のようになる。かえって危険だ。
国際政治というのは、野生動物がいるジャングルと同じ。
野生動物は相手が自分を怖がっていると思えば強く出る。
中国も同じだ。戦争を避けるために、さきほど言った「行政ができる5つのこと」にきちんと取り組むことが重要。
まず、この予防的なことをしておかないといずれ本当に戦争になる。
その後からでも同時並行でもいいので、軍事目的の訓練場が使われていないという現状を変える要求もしていくべき。
全ては日本人次第だ。
尖閣のことで日本が中国に遠慮する状況から、何か密約があるのかと感じてしまい、
米軍側から働きかけてもらうことへの期待を持ってしまうのだが、やはりそれは難しいのか。
これまで日本が何かしようとしても、アメリカの顔色をうかがいながら対応せざるを得なかった。
例えばオバマ政権では、(私は無視したが)米軍関係者に靖国神社に行かないよう指示していた。
でも今のトランプ政権は日本の味方。今までとは違うことをしてもいい時期になっているはず。
中国を刺激するから・・・なんて考え方はしない方がいい。
中国は他国との共存ではなく、自らが覇権国家となることを目指している。
まわりをおとしめる中国のもとでは、日本は奴隷になるか搾取されるかしかない。
ただし、この「機会の窓」がいつまで開いているかはわからない。
トランプ政権が1期で終わったり、台湾に親中政権ができたりする可能性もある。
タイミングのいい今のうちに既成事実を積み重ねる方がいい。遠慮することは損になる。
一方、米軍も文民統制なので、軍が勝手には動けない。
日本の世論の力で、「使わない演習場は返して」と日本人が声を上げるべき。
辺野古への移転でもめて完成までに時間がかかりそうだが、
宮古島の隣の下地島空港を自衛隊と共用する等の考えは出てこないのか。
日本には哲学も戦略もないので出てこない。
5年前、安倍総理と管官房長官が当時の仲井眞沖縄県知事に、
「普天間基地を5年以内に運用停止する」と約束したが2019年2月17日の期限までに約束を果たせなかった。
沖縄から見れば、「また日本政府が約束を守っていない」という状態
(詳細、拙論「『普天間運用停止』本当に辺野古以外の解決はなかったのか」『現代ビジネス』2019年2月21日)。
実は、普天間は米軍にとってだけでなく、沖縄県民にとっても非常に重要な施設。
津波が来ると那覇空港は全滅する(自衛隊の那覇基地も)。
嘉手納もダメになるので、90mの高台にある普天間しか使えなくなる。だから返還してはいけない。
辺野古に移転するよりもよい方法がいくらでもあった。
しかし、「何を解決しようとするのか」の前提が誰もわからないまま議論した結果、
普天間の返還について合意がされてから今まで23年経ち、辺野古の完成までにあと17年、合わせて40年かかる。
沖縄返還は20年で実現したのに、1施設に過ぎない普天間の返還に40年もかかるのはおかしな話。
辺野古移転は非常にまずいプランで、米軍も辺野古は望んでいない。
文民統制のしくみの中で、沖縄のことを知らないワシントンの人間と
沖縄に行ったことのない東京の人間が辺野古移転を決めた。
下地島空港は海兵隊としてはふさわしくないところだが、
有事のときにはぜひ使うべき場所で、自衛隊と米軍の共同使用も可能だ。
よく、普天間は世界で1番危険な基地と言われるが、それは嘘だ。
皆さんは伊丹空港や(笑)、福岡空港、台湾の松山空港を使っているが、
普天間の方が海から侵入して離陸後すぐに海に出るので、危険は限られている。
実際に普天間基地を74年間運用してきて、ケガした県民は1人もいない。
それでも普天間を返還するなら、辺野古以外の方法がいくらでもあった。
例えば、航空自衛隊は尖閣の近くに置けば緊急発進に要する時間が短くて対応しやすい。
(那覇基地と共用の那覇空港は滑走路が民間優先なので那覇基地からのスクランブル発進はすぐにはできない。
また、尖閣まで遠いためパイロットの疲労や燃料消費も増える。)
下地島空港に空自をもっていけば、必然的に中国軍の行動が変わるだろう。
また、那覇空港の空自の役割が軽減すれば、普天間基地の機能の一部を那覇に持っていける。
私が辺野古移転に反対する理由は100近くある。
普天間の滑走路は2,740mあって世界最大級の飛行機が離着陸できるのに対して、
辺野古に作る滑走路は1,190mしかなくアメリカの田舎の空港のようにセスナしか使えない。
なぜそんな施設を作るのかがさっぱりわからない。
しかも大浦湾は深く、軟弱地盤で工費がかさむ。
日本政府が辺野古移転を言うとき、唯一の解決策のように言っているが、
これは嘘で、よりベターな複数の代案があった。加えて辺野古の海抜はゼロで、津波には弱い。
また、普天間基地の教訓として、飛行場は人のいるところに作ってはいけないということがあったはずだが、
辺野古には住民がいる。彼らは既存の基地であるキャンプ・シュワブと60年間仲良く暮らしてきた。
人口も基地の開設で大きく増えた。しかし、ここに空港ができるとなると別の次元で環境が変わる。
おそらく空港開設直後から騒音等の苦情が出てくる。
となると、また新たな問題を生み出すことになって、莫大な予算を使って何の解決にもなっていない。
現在、辺野古の工事の遅延で、業者への補償など巨額の費用が生じているが、
こうした問題の発生は、私が2006年の時点で『中央公論』(「どこにも行かない『ロードマップ』」)で指摘していた。
私は地元から反対されて機動隊を投入しないと工事ができないような計画は、考え直した方がいいと思う。
私が海兵隊をクビになったのは、活動家が基地に入った映像を公開したため。
活動家が基地の敷地内に入ったためにもみ合うことになった基地警備員のメンツを守りたくて映像を公開し、
司令官がパニックを起こしたのだった。
こういうトラブルはあらかじめ予測されていたこと。
だから下地島空港は米軍よりも航空自衛隊が使うほうがいい。
辺野古よりも那覇空港を使う方がいい。
もともと那覇空港の第2滑走路は普天間の代用で有事に使う目的があったため。
そして、下地島空港を拠点に空自が動ける環境になれば、台湾空軍との連携も取りやすくなるメリットもある。
日米にとってどうすることが最も良いのか。
普天間に限らず、全ての基地を自衛隊の管理下に置くのがベストで、
そうした高いレベルの交渉に持っていかず、妥協の産物として出てきたのが辺野古移転であり、
最悪の中の最悪の選択になったのは情けないことだ。
ちなみに辺野古移設の合意ができてから、防衛大臣は35人、沖縄担当大臣は40人、外務大臣は31人、
官房長官も約30名変わった。誰が責任をとるのか。
この間、アメリカ側は国防長官など5~6名変わり、沖縄県知事は太田→稲嶺→仲井眞→玉城と変わった。
国の担当大臣がこれほどめざましく変わるようでは、沖縄の事情に詳しくなるはずがないし、
いかに日本が安全保障のことを重視していないかの表れだ。
台湾は来年1月11日の総統選挙を控えて大変な状況になっている。
アメリカの意向で台湾総統が決まるという人もいる。
そこまでアメリカの影響力があるのかどうかお聞きしたい。
多少の影響力はあると思う。
しかし、もう1カ国、中国も影響力を発揮している。
台湾住民の圧倒的多くが、自分達は台湾人であって中国とは別、中国の一部ではないと思っていても、
中国はいろんなきたない方法で結果を左右することができる。
残りの時間でアメリカと日本が協力して台湾が「絶対に自由な民主主義の西側に残りたい」
という選択ができる国際環境を作るべき。ぜひ、日本版台湾関係法をつくるようなことをやってほしい。
中国政府が台湾に対して1国2制度を適用したいと提唱しているが、
香港では既にそれが悪い例になっている。その点についてアメリカ政府はどう考えているのか。
22年前に中国に編入された香港の例は否定できない。
アメリカも台湾についての基本的な認識がまだまだ不十分で、
かつての独裁時代の台湾と今とを同一視してはいけない。
一国二制度による解決は絶対認めてはいけない。
自分達が中国の一部ではないという台湾人の意見が支配的になるまでにはもう少し時間がかかる。
最終的に台湾住民の自決を尊重すべきだが、台湾を1国だとする立場の議論がまだまだ少ない。
学会、政治家、経済界も情報戦の中にあるので、もっと広報外交が拡大しないと間に合わない。
安全保障が係わるとみんな団結するが、議員は選挙になると政治献金等で弱くなる。
政治献金に左右されず、信念、正しい認識で動けば正しい判断につながる。
台湾との軍事交流や軍関係者の人事交流のようなことは可能なのか
若干は取り組んでいるとは思うが、2つ問題がある。
まず、台湾の中で台湾軍の地位が低いこと。
資金が足りず近代化が非常に遅れており、相互運用体制をとることがむずかしい。
また、装備品だけでなく戦闘の考え方も古い。
台湾は孤立していて軍事交流がないため、およそ1970年代後半の軍隊。
40年間の日米同盟の進化は台湾は受けていないので、
これから数年の間に40年分の空白を勉強してもらわないといけない状態。
日本は米・台の双方から信頼されているので、アメリカがやらない・できないことは日本がしないといけない。
特に大きな課題になっているのは水陸両用作戦。
台湾の海兵隊は8,000人まで減少している。
自衛隊は米軍から基礎から学んでおり、身につけたノウハウを台湾に提供すれば、
日台の水陸両用作戦が同じペースで展開でき、米台日の連携ができる。
東京で台湾海軍の制服組との防衛交流の場がある。
それができる場所をもっと増やすことが重要。中国の批判をおそれず、堂々と交流すべき。
玉城知事は中国を刺激するなというが、刺激しているのは中国のほうだ。
政治・経済・軍事の可能な交流をどんどんすすめればいい。
(以上)
正論1月号増刊 「台湾危機」 の出版に関わりました。
2019年12月10日発売
https://seiron-sankei.com/11601
(執筆記事)日本版「台湾関係法」制定を今こそ
元在沖縄米軍海兵隊政務外交部次長
ロバート・D・エルドリッヂ
主催:日本と台湾を考える集い事務局
https://tsudoi-jptw.jimdo.com/
日本と台湾を考える集いは日台の相互理解の促進をめざし、関西を中心に活動をしている場です。
日台の歴史・政治・文化等幅広い課題を取り上げ、学びの場として集いを開催しています。
連絡先:090-3466-2263 (杉中)
集いでは運営のお手伝いをしてくださるスタッフを募っております。
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